コラム

本当にブラック企業?

 最近、あちらこちらでブラック企業が話題になっている。自民党から立候補した居酒屋チェーンのあの人も、ブラック企業の代表として有名になった。ブラック企業ランキングなどもネットを賑わせている。
 でも、ちょっと待ってほしい。この話になると、いつも、通勤電車で痴漢のえん罪被害に遭ったような気の毒さを感じてしまうのだ。
 人の心は複雑である。同じ会社に所属していても、ひどい会社だと思う人もいれば、居心地のいい会社だと感じる人もいるだろう。
 「100円より80円のほうが安い」という「絶対価値」で見れば、あなたの会社は残業が多いとか、給料が安いとか、さまざまな問題があるに違いない。でも、品質など「相対価値」で判断すれば、自由に仕事ができる、人間関係で苦労しないなど、評価できる点もあるはずだ。
 例の居酒屋チェーンを弁護しているわけではない。
 ブラック企業と名指しするのが、職場が嫌いでやめた、あるいは問題があって解雇されたという人なら、バイアスがかかるのは当たり前で、その評価は正当なものではない、ということだ。
 恐ろしいのは、客観的な評価がなく、だれかの噂話を無条件に受け入れてしまうことである。「ブラック」の名を冠されて、それが無実であったら、一体、だれがその被害を救済してくれるのだろう。
 「あの会社はブラックだ」と聞けば、冷静を装っている私でさえ、「そうなんだ」と警戒感を抱いてしまう。でも、本当にそうなのか。自分にとって重要なことであれば、きっと自分の目と耳で事実かどうか調べて判断するだろうけれど、そうでないことなら、人は単純に噂を信じてしまうものだ。
 ネットの噂話は、いつも面白いと思う。でも最近は、無菌培養されたような若い人が、そうした実態のない情報を無条件に受け入れ、信じてしまうことのほうが問題だと思うようになった。
 マスコミは誤っていても、「あれは間違っていました」とは滅多に言わない。ネットならなおさらである。だからこそわれわれは、もっと「疑う」ことを身に付けなければならないと思う。

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