コラム

東北の春とイソップ物語

 ごぶさたしておりました。仙台は寒い日が続きましたが、ようやく春らしい暖かさを感じられるようになりました。それでも、桜が満開になるのは、もう少し先になりそうです。正確なところは分かりませんが、体感的には昨年と同様、春の手応えを感じられない、妙な季節になっています。
 東北の春は、ゆっくりと訪れます。新緑は5月の連休明けぐらいから。山肌を飾る木々は、明るくやわらかな緑色の葉に包まれます。最近は違った意味に使われていますが、まさに「萌え」出ずる春の景色。自然の中には、こんなにもさまざまな色合いの「緑」があったのかと驚かされる季節です。
 しのび足で近づく春とともに、当社でも新入社員を採用しました。初めての新卒採用です。当社はことし、積極的にスタッフを増やし、従来の倍の仕事をこなせる体制にする計画です。復興バブルとは全く関係なく、仕事も取引先も増えているわけではないのですが、東北一の編プロになるには、どうしても必要なことであると考えています。
 坂口安吾はかつてエッセイで、「百万長者が五十銭の車代を三十銭にねぎるのが美徳なりや」と書きました。安吾の出身地の新潟では、石油成金が毎日、万代橋まで歩いて、そこから車に乗り、二十銭を節約したことを美徳として学校などで説いていたそうです。しかし、安吾は「否」と書きます。それほどの長者なら二十銭を節約などせず、車代に使えば、車引きの生活も楽になるだろう、というわけです。納得ですね。
 ほとんどの企業は、あらゆるサービスや商品を安くすることに血道を上げてきました。その一方で、利益を上げるために正社員を減らし、給料を減らし、材料費を減らし続けてきました。気づいてみれば、人々はモノを安く買えるようになりましたが、それ以上に収入は下がり、やがて買い物さえままならなくなっていました。イソップ物語みたいですね。
 人々は、ようやく、そのカラクリに気づき、方向転換を始めたように思います。日本の春もまもなく……。それが、当社のスタッフ増員の理由でもあります。

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